我が子の「得意」を見つける方法 苦手への配慮と両立するポジティブな育て方
はじめに:子どもの成長における「得意」の重要性
子育てをしていると、ついつい我が子の苦手な部分や困りごとに目が向きがちになるかもしれません。「もっとここができるようになったら」「このつまずきをどうにかしたい」と考えるのは、お子さんの成長を願う保護者としての自然な気持ちです。
しかし、子どもたちが自信を持って未来へ進むためには、苦手なことへのサポートと同じくらい、あるいはそれ以上に「得意なこと」や「好きなこと」、「強み」を見つけ、伸ばしていくことが非常に重要です。お子さん自身の意欲を引き出し、自己肯定感を育む上でも、得意なことへの関わりは大きな力となります。
この記事では、お子さんの「得意」をどのように見つけ、どのように家庭や学校でその強みを伸ばしていくことができるのか、具体的な方法と考え方をご紹介します。苦手なことへの配慮も大切にしながら、お子さんのポジティブな側面を育むヒントになれば幸いです。
なぜ子どもの「得意」を見つけることが大切なのか
子どもの「得意」や「強み」に注目し、それを伸ばしていくことには、様々な大切な意味があります。
第一に、自己肯定感を育む上で欠かせません。得意なことがある、自分の能力を認められるという経験は、「自分にはできることがある」「自分は価値のある存在だ」という感覚につながります。これは、新しいことに挑戦したり、困難を乗り越えたりするための心の土台となります。
第二に、学ぶことへの意欲や喜びを高めます。好きなことや得意なことに関わるとき、子どもは集中力を発揮し、楽しみながら深く学んでいきます。この成功体験は、他の苦手な分野へのモチベーションにも良い影響を与えることがあります。
第三に、社会との関わりの中で役割を見つけやすくなります。集団生活の中で自分の得意なことを活かせる機会があると、貢献している感覚や認められる喜びを感じられます。これは他者との良好な関係性を築く上でも役立ちます。
「受け入れる教育」の理念は、子どもの多様な特性を理解し、一人ひとりに最適な学びや関わり方を提供することにあります。その子の苦手な部分だけでなく、持っている「強み」に光を当て、そこからアプローチしていくことも、個別最適な学びを実現する重要な方法の一つです。
我が子の「得意」をどう見つけるか:日々の観察と声かけ
お子さんの「得意」は、必ずしも「成績が良いこと」や「誰かに勝てること」だけではありません。幅広い視点から、お子さんの様々な側面を観察することが大切です。
具体的な観察のヒント
- 何に時間を忘れて没頭しているか: 好きな遊び、特定の話題についての探求、特定の作業(絵を描く、ブロックを組み立てる、生き物の世話をするなど)など、集中している様子を観察します。
- どのような時に目が輝いているか: 楽しいと感じている時、興味深い話を聞いている時、新しい発見をした時など、ポジティブな感情が表れている瞬間です。
- どのような活動を自分から進んで行うか: 宿題以外の読書、特定の情報の収集、何かを作ることなど、自主的に取り組んでいることです。
- 人との関わりの中でどのような役割を担うことが多いか: リーダーシップを発揮する、困っている人を助ける、場の雰囲気を和ませるなど、対人関係での特性です。
- 特定のスキル: 体を動かすことが得意、細かい作業が得意、記憶力が良い、想像力が豊か、言葉で表現するのが得意など、具体的な技能や能力です。
- 考え方の特性: 物事を論理的に考えるのが得意、多角的な視点を持つ、ユニークな発想をするなど、思考のパターンです。
声かけを通じて「得意」を引き出す
「得意」は、子ども自身も自覚していない場合があります。保護者からの肯定的な声かけが、子どもに「自分はこれが得意なのかもしれない」と気づかせるきっかけになります。
- 「〇〇、集中して取り組んでいるね、すごいね」
- 「△△について、そんなに詳しく知っているんだね。教えてくれてありがとう」
- 「この絵の□□の色使い、とても素敵だね」
- 「お友達が困っていた時に、優しく声をかけてあげていたね。素晴らしいね」
- 「難しい問題だったけど、諦めずに最後まで考えられたね。その粘り強さが△△の強みだよ」
具体的な行動や結果に対して、その子の持つ良い特性(集中力、知識欲、感性、優しさ、粘り強さなど)を結びつけて言葉にすることが効果的です。
苦手への配慮と「得意」を伸ばすことの両立
お子さんに苦手なことがある場合、「得意」を伸ばすことと、苦手なことに向き合うことをどのように両立させれば良いのか悩むかもしれません。
大切なのは、「得意」を伸ばすことを、苦手克服の「逃げ道」にするのではなく、「苦手なことにも取り組むためのエネルギーや自信を養う土台」と捉えることです。
例えば、学習に特定のつまずきがある子でも、特定の分野(例: 歴史、科学、特定のスポーツ選手の情報など)に対する知識欲が非常に高い場合があります。その強い興味・関心から学ぶ楽しさを知り、それが苦手な教科への学習意欲にもつながることがあります。
また、手先を使うことが苦手な子でも、言葉で表現することが得意であれば、作文や発表の場でその力を活かすことで、自分の存在意義や能力を感じることができます。
苦手なことへのサポートは必要ですが、そればかりに焦点を当てるのではなく、同時に得意なことを認め、伸ばす機会を提供することで、お子さんはより前向きな姿勢で様々な課題に取り組めるようになります。
家庭で「得意」を伸ばす具体的な関わり方
家庭は、お子さんが安心して自分の「得意」を探求し、伸ばしていくための最も重要な場所です。
- 得意なことに触れる機会を増やす: お子さんが興味を示している分野に関連する本や道具を用意したり、関連施設を訪れたりする機会を作ります。強制ではなく、あくまで「やってみたい」という気持ちをサポートする形が良いでしょう。
- 一緒に楽しむ: お子さんの得意なことに、保護者も興味を持って一緒に取り組んでみましょう。共通の体験は親子の絆を深め、お子さんのモチベーションを高めます。
- 成果を共有・承認する: お子さんが得意なことをして何かを達成したり、成長が見られたりしたら、具体的に言葉にして承認します。作品があれば飾る、発表の場を設けるなど、成果を共有する機会を作ることも自信につながります。
- 失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気を作る: 得意なことでも、必ずしもうまくいくとは限りません。失敗しても大丈夫、次はどうすれば良いか一緒に考えよう、という温かい姿勢で支えることが、挑戦意欲を育みます。
学校と連携して「得意」を活かす
学校は、家庭とは異なる環境で子どもの多様な側面が見られる場所です。学校の先生と情報共有し、連携することで、お子さんの「得意」を学校生活の中で活かす機会を見つけられることがあります。
保護者から先生に、家庭で見られるお子さんの「得意なこと」「熱中していること」「良い特性」を具体的に伝えることから始めてみましょう。懇談会や連絡帳などを活用し、一方的な要望ではなく、情報提供という形で伝えることが大切です。
先生は集団の中でお子さんを見ていますので、家庭とは違う側面での強みを発見されている場合もあります。先生が見つけられたお子さんの良い点や得意なことについても、ぜひ教えていただきましょう。
お子さんの得意なことが、授業での発表、係活動、委員会活動、クラブ活動、クラス内での役割などで活かせる機会がないか、相談してみるのも良いでしょう。例えば、絵を描くのが得意なら掲示物作りを任せてもらう、特定の知識が豊富なら調べ学習でリーダーシップを発揮するなど、得意を活かす場があることで、お子さんは学校生活により積極的に関われるようになります。
まとめ:強みを育む視点を持つことの重要性
子どもの成長をサポートする上で、苦手なことへの理解と支援は確かに大切です。しかし同時に、その子が持っている「得意」や「強み」にしっかりと目を向け、そこから伸ばしていく視点を持つことは、子どもの自己肯定感を育み、学ぶ意欲を高め、将来にわたって自分らしく生きていく力を養うために不可欠です。
日々の生活の中で、お子さんの「好き」や「できる」に丁寧に寄り添い、肯定的な言葉をかけること。そして、家庭だけでなく学校とも連携しながら、お子さんが自分の強みを活かせる機会を作っていくこと。これらの積み重ねが、お子さんの健やかな心の成長と、個別最適な学びの実現につながります。
お子さんの多様な可能性を信じ、ポジティブな視点でお子さんの成長を見守っていきましょう。